ドウントレッドリゾート


 1月30日(火)

スキー

 今日は昨日とは打って変わった晴天である。朝の4時過ぎに目が覚めた僕は、一抹の期待を込めて寒い中、駐車場まで出向いたが、残念ながらオーロラを見ることは出来なかった。
 朝食を済ませると、スキーを担いでコテージの間を通り抜けてリフトの横へ。リフトの左右にビギナーコースがあり、そこを滑ってメインのリフトへ。降りると昨日、リフトに乗るのを手伝ってくれた女性がスノーモービルで近づいて来た。今日は昨日、僕がずっと使っていた方のリフトは停まっていて、もう少し奧のリフトが動いているとの事。スノーモービルの後ろの紐を指さし、引っ張っていってあげようと言ってくれたが、体を温める必要もあることなので、自分で行くというと、にっこりわらって去っていった。
 さて、リフトに乗るのに手伝ってもらうって、リフトも乗れないのにスキーをしているのかと言われそうですが・・・・。

 このリフト、分かります?どうやって乗るか。T型リフトというそうですが、ここのスキー場はジャンプの選手が使用するリフト以外はすべてこれです。



 女の子二人が乗っているのが分かるでしょうか?そう、これで乗っているのです。というか、お尻に当てて引っ張ってもらうのです。二人だとわりと簡単なのですが、一人だと結構、難しい。結構速いですし、真ん中のバーをつかんですぐにお尻にあてるんですけど、凍っていて滑ると反対側があいているので斜めになってすり抜けていってしまいます。
 ちなみにこの二人、日本人女性で、リフトの終点で写真の撮りあいをしていたので、並んで撮ってあげました。結構、かわいいお二人でした。



 僕は一人で乗ると3回に2回は失敗するので、係りの人が僕が乗り場に来るとすぐに出てきて手伝ってくれました。実は初日、うまく乗れず手でつかまってひっぱられていたとき、きつい登りの途中で離れてしまったのです。人がいないバーは手の届かない高い所を通っているため、仕方なくカニ歩きで上っていると、スノーモービルで助けに来てくれました。コースの途中に降ろしてくれて、「いつでも助けるよ。」と言ってくれました。この後は乗るときに助けてくれたのでスムーズに乗る事が出来ましたが。コースが横切っているところでは途中下車も出来ます。

 前の晩、前出のSさんがナイトツアーの時に説明してくれたのだが、なぜ、T型リフトになっているかというと、普通のリフトにすると、乗っている間に膝が冷えてしまって危険なのだそうだ。北極圏ならではである。このリフト、自分でスキーをコントロールしながら上っていかないと、ぼーっとしているとバランスを崩してこけてしまう。準備運動も何もしない人が乗っても、上に上がるまでに膝が暖まるようにという事なのだそうだ。おかげで、かなりきつい。人が少なく、リフトに人が並んでいるなんて事は絶対に無い所である。一度に4人くると、「今日は混んでるな〜」というそうである。だから、途中で失敗してリフトから落ちても、殆どの場合はそのリフトの下を滑って降りることが出来る。後ろがいないのだから。
 上についても、そんなわけで休憩する場所も何もない。だから滑って降りる。降りても小さなレストランのようなものがひとつあるだけで、立っていても寒い。だからまたリフトに乗る。だけど、このリフト、上記のようなわけで休憩できるわけではないので、結構、しんどい。上についても寒いからすぐ滑る・・・・と、スキーは滑り放題だが、かなりきつい。運動不足の僕の足はすぐに悲鳴をあげてしまう。(^^;

 しかし、この日は素晴らしい天候で、目の前に広がる景色は言い表しようが無い。ただ、天気が良くなると寒くなる。一本滑るごとに顔を手で暖めなくてはならない。
 また、写真を撮ろうにもすぐに手がかじかむ。4枚もシャッターを押せばすでに指先はしびれている。ホテルに帰って初めて知ったのだが、零下15度だったそうだ。スキーをするにはきつかったでしょうと言われた。時すでに遅しだが・・・。
 零下15度というと、滑っているだけで凍傷になる人がいるのだそうだ。



 イエリバーレへ

 この天気なら今夜はオーロラを見る事が出来るかも知れないと期待しながら早めにホテルに引き上げる。今日はイエリバーレの町に行ってみようと思っていた。レセプションに行ってタクシーを呼んでもらう。実は、町の観光は最終日にしようかと思っていたのだが、スタッフの話では、スキーは15時にリフトが停まるから、その後で行っても充分だとの事。5分もあれば町に着くらしい。最終日の2月1日には近くの町で大きなマーケットが開かれ、そこに行くツアーが出るとの事なので、そっちに参加する事にした。
 程なくタクシーが向かえに来てくれる。協定料金で町中の指定する場所まで80クローネの定額料金だ。

 ここで、このドウントレッドスキーリゾートについて若干の説明をしておくと、このホテルが活動の拠点になっており、ここに宿泊すると非常に便利である。レンタルスキーもリフトチケットも部屋付けに出来るし、ツアーの参加もすべて部屋付けで最後に精算できるので、現金は殆どいらない。タクシーも上記のように定額なのでどれくらいかかるといった心配も不要だし、当然、帰りも指定されたタクシー乗り場から乗れば同じ定額料金だ。日本人スタッフも2人おり、外人スタッフも日本人には慣れているので、非常に快適である。レンタカーの手配もしているようだ。

 町中のお土産店まで行ってもらう。レセプションでもらった手書きの簡単な地図と周りを見回す。確かに、一日はいらない、小さな町だ。お土産店の中は思っていたような感じではなく、ロウソクや高価な工芸品が置かれており、キーホルダー等がならぶお土産やさんを想像していた僕はちょっと面食らった。会社へのお土産に本のしおりを買うと、ウインドウショッピングをしながら町の探索をすべく、店をでる。しかし、すぐにめげてしまう。寒いのだ。放射冷却の関係で、ホテルのある山の中腹の方が暖かいのだそうだ。山の中腹で森があるドウントレッドに比べると5度以上、気温が低いらしい。

 こんな町並み。あちこちの店の前では犬がつながれてご主人を待っている。
 しかし端から端まで歩いても2時間有れば時間を持て余すだろう。町中に喫茶店は1軒しかなく、入るような店もあまりない。
 ホテルでレストランに行く気のない僕は、この町で一番大きいというスーパーマーケットに行き、インスタントラーメンとパン、ブロッコリー、レタス、プチトマト、紅茶、インスタントのスープを買って、タクシー乗り場のある駅に向かった。時間は16時頃だが、すでに日は暮れ、ホテルに帰ってきた頃は真っ暗であった。



 オーロラとの出会い

 サウナに行ったとき、レセプションの前でSさんと会い、いろいろな話を聞く事が出来た。この人、年に14回もこのあたりに来られているらしい。いいな〜と思う無かれ、けして楽な旅では無いのだから。おまけに仕事だし。
 でも、大阪からJTBのツアーで来たことやF社で返事が貰えなかった事など話をしていると、いろいろ教えてくれた。F社は多分、専属の人がいないので、メールが処理しきれないのだろうとの事。その人も一杯、メールをもらうが、短いメールほど困るそうだ。返信の雛形の中に、「お答えできません」という雛形まであるという。一日に100通を超えるメールを処理しようとすると、専属がいないと無理なのである。
 しかし、さすがによくご存じで、成田が雪で閉鎖になって羽田に振り替えで来たこと等を話すと、便名から発着時間、果ては途中乗り換えのターミナルのゲート番号までご存じだった。大阪から24時間以上かかるので遠いですねと話すと、実は、関空から来る方法を教えてくれた。10時間ほどでコペンハーゲンに着くらしい。ただ、ドウントレッドに関して言えば、ツアーで来た方が絶対、安いですよとの事だった。

 上の部分については僕の理解不足で、この旅行記を読んでくれたSさんより正確な情報がメールで届いたので、ここに引用しておきます。

「関西空港からバンコックまで、関空発夜便でくれば約6時間、そこから乗り継いで約10時間で
ストックホルムに着くタイ航空の便が以外に便利です。これですと次の日の朝6時半には
ストックに着きます。ナイトランですので案外楽です。伊丹から成田。コペンハーゲンと乗り継いで
ストックに来るのと実際の時間はあまり変わらないかも知れません。
ただ、北極圏までさらに飛ぶオーロラのパッケージと言うことであれば、旅行会社を通してSASとホテルのパックになったものを購入されるのが価格的にも絶対にお得ですが。」

  しばらく話し込んだ後、サウナに行く。出てきてから空を見上げるが、まだ雲がかかっているのか、星が見えない。諦めて部屋に帰り、ラーメンを作って夕食にし、本を読んで22時頃電灯を消した。

 うとうとしていると、レセプションから突然の電話。「お休みの所、申し訳有りません。今、オーロラが出ていますよ。」の声に飛び起きた僕は、あわててスキージャケットを着、カメラをリュックに詰め込むと時計を見るのも忘れて靴を履こうと足をつっこむがうまくいかない。あっ、三脚だと思い、履きかけの靴を放り出しスーツケースの中を見るが無い。ええいと荷物をかき分けて気が付く。そう、左の脇に抱えているのだ。もう何がなんだか分からないくらいあわてながら靴を履き、表に飛び出す。空を見上げるが「?」。隣のコテージからも出てきているが首をひねっている。僕は、オーロラを見るならあそこがいいですよと教えてもらっていた駐車場の奧に向かって走り出した。手がしびれるように冷たいが、リュックの中の手袋を出す間も惜しく、真っ暗な森の中へ走っていく。空を見上げながら、滑って転びそうになりながら。周辺の明かりが無くなるに連れ、薄く雲のように雲の切れた星空を埋めているもやのようなものがオーロラであることに気が付いた。その端の方、山にかかるあたりで薄い緑色のオーロラが、カーテンの端の方だけを形成している。デジカメを向けるがまったく反応しない。あまりにも薄いオーロラのため、写真は諦めざるをえなかった。そしてそんなに時間をおかずして消えてしまった。しかし、ハッキリ出たときのオーロラを想像させるには充分で、下から幾重にも重なったバラの花弁を見るような、空全体を覆うカーテン。淡いもやのようなものであったが、その形だけは分かった。
 レセプションの前に帰り、時計を見る。時間は午前1時前。コーヒーを一杯飲むと、もう一度身支度を整え、駐車場に戻り空を見上げて待っていたが、結局、寒さに負けてコテージに帰り、これ以上は見る事が出来なかった。


トップヘ  前(アクティブティー)へ  次(オーロラショー)へ