初めてのバンコク


 ファラムポーン駅のホームから駅構内に出る。設備も整備され、綺麗な駅であった。今日の予定は、バンコクの宿泊場所を予約してもらったドリームカムズツアーに行って宿泊費の支払いをして、その後、スーツを作りに行こうと思っていた。3泊なので、今日、注文を出しておけば帰る時には持って帰られるだろうからだ。
 時間が早い為、ファラムポーン駅からドリームカムズツアーのあるナナまで歩いていこうと思っていた。地図を確認し、ファラムポーン駅から外に出ると、わんさかトゥクトゥクが停まっていて、大きな荷物を担いでいる僕の姿を見ると、「タクシー、タクシー。」とすぐに声をかけてくる。「ドコニ イキマスカ?」と日本語で声をかけてくる人までいる。手を横に振りながら前を通り過ぎ、東に向かう。しかし、後悔するまでそんなに時間はかからなかった。
 この荷物、こんなに重かったか?と思うくらい、重くのしかかる。体調がすっきりせず、歩くのがしんどい。汗がじわっとわいてくるが、暑いせいでは無く、冷や汗だ。30分くらい歩いた頃、ナナまで歩くのはあきらめた。
 地図を見ると、一番近いのは、BTSのサナーム・ギラー・ヘンチャート駅だ。メータータクシーやトゥクトゥクが数多く走る中、乗ろうかどうしようかと迷いながらも、何とかサナーム・ギラー・ヘンチャート駅についた。BTSは高架の為、階段を昇らなくては行けないが、途中で階段に荷物を降ろし、座り込んだ。通勤ラッシュは過ぎたのか、駅に出入りする人の姿はまばらで、邪魔になるような事はなさそうであった。なかなか腰を上げる事が出来ず、30分ほど経ってからようやく、立ち上がった。
 ナナまでの切符を買い、一駅となりのサイアム駅で乗り換えると、そこから3つ目がナナ駅である。ガイドブックに「自動改札の扉が閉まるのが早い」と書かれていたが、乗る時も降りる時も担いでいる荷物が挟まれかけた。
 ナナ駅の階段を降り、ソイ11を北に上がる。声をかけてくるメータータクシーやトゥクトゥクがうっとおしい。わずか300m程の距離がとにかく遠い。グランドプレジデントタワーUを見つけ、中に入ると7階に上る。ようやくドリームカムズツアーのオフィスを見つけるが、時間はまだ8時30分。オフィスの開く時間はわからないが、オフィスの前にソファーがあるのが幸いだ。荷物を置き、もたれながら目をつぶった。ドリームカムズツアー以外にもいくつかのオフィスが入っており、出勤してくる人が横を通るが、しんどいのが先だった。
 9時頃、ドリームカムズツアーのオフィスに男の人が出勤して来た。僕は荷物を持って中に入り、声をかける。タイ人だろうその人は、こちらが日本人らしいと確認すると、日本語で話しかけてきた。8700バーツを支払い、領収書を受け取る。「チェックインは何時でしょう?」「大抵、12時ですが。」「チェックイン前でも荷物を預かってくれるでしょうか。」「宿泊予約がある事を伝えれば大丈夫でしょう。」との事だった。
 1階に降りて外に出ると、またまたタクシーの運転手が声をかけてくる。「ヤスイ ホテル シッテルヨ」と日本語で話しかけてくる人もいた。少し休んだせいもあり、若干体調がましになっていたので、近くのタイムズスクエアの3階にあるテーラーK2を目指して歩いた。テーラーの情報はあまり無かったが、比較的、このテーラーの評判が良かったのと、日本人がいる為、日本語で注文が出来るからだ。しかし、時間がまだ早かった為、開いていなかった。ちょっと歩いただけだが、もう背中の荷物が重くのしかかる。あまりにしんどい為、とりあえず荷物を預けに行こうとタイムズスクエアーの前でタクシーをつかまえると、地図を見せ、行き先を伝える。運転手がOKと言ったので後ろに乗る。何も言わなくても運転手はメーターのスイッチを入れたのを見て座席の荷物にもたれた。
 やがて運転手が英語で、「サラデーン通りだ。」と言ったので、体を起こした。目的の建物を見つけてタクシーを降りる。







 これがバンコクで滞在するサラデーン・コロネード。ホテルでは無く、サービスアパートメントだ。
 事前にここの情報を探したが、ネットでの情報は殆ど無かった。1階にあるイタリアレストランのザノッティの方が有名である。
 アジア一と言われる歓楽街、バッポン、BTSのサラデーン駅と、7月に開業したばかりの地下鉄、シーロム駅まで歩いて5分程という好立地である。









 入り口を入り、フロントで「予約をしているが、チェックインまで荷物を預かって貰えないか?」と聞くと、こちらの名前をきき、快くOKしてくれた。「何時頃、チェックインするしますか?」ときかれ、「13時か14時頃」と答えて、荷物を持たない、身軽な格好で街へと出た。
 地下鉄のシーロム駅からスクインビット駅へ。スーツのオーダーに挑戦すべく、再度、テーラーK2へ向かう。3階に上がると、でかでかと日本語で「5800バーツから」という看板が出ていた。中に入ると女性が一人で店番をしていた。「日本人は何時頃に来る?」と聞くと、「14時頃」との返答だった。この答えを聞いた時に、僕はスーツのオーダーをあきらめた。荷物を置いてきたとはいえ、相変わらず体調は不調である。14時にはチェックインして一休みしたかった。
 タイムズスクエアを出ると、後の日程を考え、今日中にワット・プラケオとワット・ポーだけは行っておこうと思った。ワット・アルンも行く予定だったが、しんどいので船で対岸に渡る気はしなかった。タクシーをつかまえ、ワット・プラケオまでと言って乗り込む。運転手が走りながら、「ハイウェーを通るか?」と聞いてきた。一般道は混んでいるとの事。どれくらい時間がかかるか聞いてみても、長くかかるとしか答えない。まあ、実際、話をしている間もノロノロとしか進まず、歩いているよりは少し早いかな程度の速度だった。ハイウェーに乗るように伝えてハイウェー代、40バーツを渡す。
 20分ほどでワット・プラケオの前に到着した。タクシーは入り口の真ん前につけてくれたので、迷う事は無かった。中に入ると、左側に軍隊の駐在所があり、小銃を持った兵隊が立っており、その後ろには台に乗せられたマシンガンがこちらを向いていた。
 右側には一杯人が並んでいる。どうやら服装チェックでひっかかった人が服を借りているようだ。どこから入ったらいいのかなと思っていると、前にいた係の人が手で入れと合図をしたので、並んでいる人の横を通り過ぎて奥へと入った。





 左手を見るとこんな風景。金色の塔の後ろに隠れて見えるのがエメラルド寺院だ。
 入り口はこの写真の右側あたりになる。
 200バーツの入場券を買い、入り口へ。置いてある案内パンフレットの中から日本語版を持って中に入る。








 中に入ると、目の前に豪華な建物を見る事が出来る。
 エメラルド寺院の中は撮影禁止の為、撮れなかったが、豪華絢爛という言葉が当てはまる美しさだった。







 ゆっくり中を見て回りたかったが、正直、すごくしんどくて、とにかく座りたかった。途中にあった休憩所みたいな所で寝ころんでいると、係の人が起こしに来た。体がぎしぎしするような感覚だ。時折、寒気もする。
 意を決して、残りの博物館などはパスし、ワット・ポーへ向かう事にした。

 外に出て右に回り、ワット・ポーを目指す。頭はずきずきするし、全身だるいし、最悪の体調である。海外に来て、これほど体調が悪いのは初めてだ。道を歩きながら、周りを見る。しんどい中、実は王宮周辺に出没するという、詐欺師軍団が声をかけてこないかなと思っていた。せっかくだからラッキーブッダとかの位置だけ地図に印をしてもらい、後は断って逃げようと思っていた。しんどいのに、何故かそんな事を考えていた。しかし、たまたま詐欺師がいなかったのか、声をかけるのもためらうほど、フラフラだったのか、わからないが、結局、誰にも声をかけられずワット・ポーに着いた。
 入り口で20バーツを払い、見所の寝観音を尻目に脇目もふらず奥へと進んだ。何故ワット・ポーに来たか。そう、目当てはマッサージである。タイ古式マッサージの総本山がここ、ワット・ポーで、マッサージの学校もある。
 マッサージをしている所を見つけて受付で全身マッサージ、60分を頼み、300バーツを払う。すぐにマッサージをしてくれる若い女の子が奥へと案内してくれる。
 ズボンをゆったりしたものに履き替え、脱いだ服はカゴに入れて枕元に置く。うつぶせに寝ると、女の子がワイをしてマッサージが始まった。これが実に気持ちいい。マッサージだけでなく、その空間が気持ちいい。空調機器は何もないが、何せお寺の中である。建物の天井はすご〜く高く、だだっぴろい空間に台を置いて畳が乗っている。そう、風通しがすごく良い。気持ちの良い風が通りすぎていく。少しきつめだったため、「もう少しソフトに」というと、少しニコッとして、「イタイ?」と日本語で聞いてきた。まあ、日本人は一杯来るんだろうな〜。
 60分、ゆっくりとマッサージを受け、随分元気になった。寒気は消え、完全とまでは行かないが、随分すっきりとした感じだ。「サンキュー」と言って外に出ると、通り過ぎてきた寝観音を見に行く。






 かの有名な寝観音。この位置が撮影ポイントのようだ。









 まあ、僕のサイトなら載せておかないといけないですよね、やっぱり。(ヨーロッパの旅行記を読まれた方はわかると思いますが。)
 そう、寝観音の後ろです。(^^)








 一通り中を見た僕は、外に出るとタクシーを拾う。時間は14時前。サラデーン・コロネードに着くとチェックインする。409号室。預けた荷物を受け取ろうとすると、「部屋に入れてあります。」との事だったので、エレベーターに乗る。しかし、4階のボタンが押せない。エッと思って他のボタンを押してみるが、押せない。ふとボタンの上を見ると、なにやら白い箱があり、真ん中に赤いランプが点いている。もしかしてと思い、部屋のキーについているタグをかざすと、ランプが赤から緑に変わり、4階のボタンを押す事が出来た。
 4階でエレベーターを降りてびっくりした。本当にホテルではなく、アパートなんだと思う光景が広がる。








 これがエレベーターを降りて部屋の方を向いた光景。両側に部屋が並ぶ。








 部屋に入ると左側にベッドルームとトイレ、バスルームがある。トイレ、バスルームは不必要なくらい広い。そこを過ぎると左手にキッチンがあり、右手に冷蔵庫他、食器類を入れてある棚などがある。更に奥に行くと右手にデスクとテレビ、ステレオがあり、左手がこの写真である。かなり快適な部屋だ。







 部屋の中を見て回りながら、置いてあるという荷物を探すが・・・無い。戸棚の中等も開けてみてみたが・・・無い。フロントに聞きに行こうかと思った所でドアがノックされた。開けると、僕の荷物を持ったボーイさんが立っていた。荷物を受け取ると、今度はLANの接続口を探す。何故、ここにしたかというと、全部屋からADSLによるインターネット接続が可能だという事だったからだ。しかし、それらしき物は見あたらなかった。僕はこのホテルのウエーブサイトを印刷してきた紙を持って(もちろん英語)、フロントへ行った。
 「ここに書いてあるインターネットのサービスを受けたいのですが。」「パソコンは持ってきていますか?」「ハイ。」「それでは、部屋でお待ち下さい。モデムを持ってセットに行かせます。」
 部屋にLANの口があるという事ではなく、別料金でADSLのモデムを借りる事が出来るという事だった。部屋に帰って程なくモデムを持ってボーイさんが来た。テレビの横のデスクにモデムをセットが終わると、早速パソコンをつなぐ。難なくネットへの接続が完了し、メールのチェックをしていると、メッセンジャーに子どもがログインしてきた。時計を見ると15時過ぎ。日本でもまだ17時過ぎのはずで、高校生の子どもが帰ってくるのには早すぎる時間帯である。メッセンジャーをクリックして、「もう帰ってきたのか?」と問いかけると、「テスト期間だから。」と返答が帰ってきた。少し話をして、子どもは明日のテストに備えるべく、ログアウトしていった。メッセンジャーとは本当に便利なものだ。

 一通り、部屋の中の確認や荷物の整理などが終わると、僕はベッドルームへと行った。また体調が悪くなってきて、座っているのもしんどくなってきたからだ。朝、5時過ぎに寝台車の中で朝食を取ったっきり、水を飲む以外、何も口にしていない。お腹が空いているものの、少し休んで調子が戻ってから何か食べに行こうと思っていた。
 タイ料理がどうも合わないような感じだったのと、どうも胃腸が疲れているような感じだったので、うどんを探そうと考えていた。ここ、サラデーン・コロネードはタニヤも近い。バッポンのすぐ横に日本人専用の歓楽街、タニヤ通りがある。日本食の店も結構あるとの事なので、そこに行けばうどんくらい食べられるだろうと思っていた。
 しかし、時間が経つにつれ、事態は悪い方へと向かい、寒気がしてきて、体の間接が痛み出した。もうこれは本格的に熱が出てきたようである。体温計は持っていないが、間違い無いだろう。外に何か食べに出る事をあきらめた僕は、2つ買ってあったうちの残りのひとつ、カロリーメイトと水、そして寝台車に乗る時に買ったクッキーをベッドルームへと持って来た。
 成田で買った2つのカロリーメートの内、ひとつはトレッキングの最中にお腹が空いて動けなくなったら困るので、そういう事態用であった。だから、2日目の夜に、もう必要ないからと思い、F氏と話しながら食べてしまった。もう一つは、まさにこのような事態になった時の為に(タイ料理が合わなくて、食べるものが無かった場合)用意しておいた物だ。短時間で熱を下げようと思えば、逆にエネルギーを入れて熱を出さなくてはいけない。
 時間はまだ18時頃。カロリーメイトとクッキーを食べ、500mlのペットボトルの水を空にすると、電気を消してベッドへと潜り込んだ。






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