オーロラを求めて


1月28日(日)

  日本出国

 「今、インターホン、なったんとちゃう?」の連れ合いの声に一瞬で目が覚めた僕は時計を確かめる事もせず、パジャマのまま玄関に飛んでいった。ドアから首だけ出すと、向かえに来てくれたタクシーの運転手に、「すぐ来ますから、少し待って貰えますか。」と言うと、すぐに2階へ着替えに戻る。5時過ぎにかけていた目覚ましがなったのにもまったく気づかず、インターホンにも気づかないくらい、しっかりと眠っていたのだ。

 オーロラを見たいという思いは随分昔からあった。去年の夏、、ヨーロッパ旅行をした時、レストランでの会話の中で、「次に行くのはタイかな〜(連れ合いと子どもは3月に行っている)。」「なんか、私達の後を追っかけてるみたい。どこか自分で行きたいっていう所は無いの。」「あるけど、誰も一緒にけーへんやろ。」「そんなん、わからへんやん。どこなん。」「実は、オーロラを見に行きたいねんけど。」の僕の言葉に連れ合いと子どもが声を揃えて「一人で行って。」と即答されてしまった。二人とも寒いところは好きではないのだ。
 何年か前、連れ合いがスウェーデンの学校を自費で視察したときに使用した北欧専門の旅行会社から連れあい宛にパンフレットが送られてきた。それは「11年に一度のチャンス!」と書かれたオーロラ鑑賞のパンフレットであった。太陽黒点の活動が活発で、オーロラを見るには絶好のチャンスだという。2月頃にタイへの安いツアーに参加しようかと思案していた僕は、速攻でオーロラ鑑賞ツアーに行くことを決めた。
 そのF社はウエーブサイトも持っており、すぐにアクセスをして「オーロラを見ることを第一義にして確率を90%以上と考えた場合、何泊くらい必要ですか?」と最初の問い合わせのメールを出す。一日おいて帰ってきたメールには何日くらいといった事は一言も書かれておらず、パンフレットに載っているのと同じせりふが並んでいて、まったく期待はずれのものであった。しかし、何度かやりとりをしているうちに分かるだろうと思い、表現を変えて次のメールを出す。一週間待ったが返事が無い。結局、このメールに対する返答は無かった。ネット上の事故でメールが到着していない可能性もなきにしもあらずだが(1996年頃に6通、一度に出したメールのうち、4通が行方不明になった経験上。しかし、それ以降は無いので考えにくい。)、最初のメールに対してのめんどくさそうな返信から考えると、具体的にお客になると確信が出来ないうちはまともに相手にしてくれないのではないだろうかという印象もあり(これについては僕の誤解もあります。途中でまた出てきます。)、結局、去年のヨーロッパ旅行の手配をしてもらったワールドエクスプレスに頼むことにした。去年、情報をもらうべく、往復で70通を越えるやりとりをした何社かの関係会社のうち、ワールドエクスプレスとのやりとりだけで40通を越える。北欧のツアーを手配しているかどうかは分からなかったが、問い合わせのメールを出すとすぐに手配できますというメールが帰ってきた。この会社が直接手配しているわけではなく、他の会社のツアーを手配してくれるわけではあるが(ちなみにこの会社のおとくいはニュージーランド方面のようである。去年からちょっと変わったバリ島の音楽にふれるというツアーも始めたそうだ。)、去年のやりとりから、細かい所まで安心して任せる事が出来るので、ここにお願いしてJTBのスウェーデンはドウントレッドの5泊7日のツアーを手配してもらった。出発前3週間を割ってから、急に日程を変更してもらうなど、今回もご苦労をかけたが、無事、手配が出来た。

 前日、正確には今日の1時過ぎまで起きていたため、またまた4時間半ほどの睡眠になり、寝不足である。5分ちょっとで身支度を整えるとスーツケースとリュックを持って玄関に出る。前日にした準備が完璧であることを祈って、確認したのはパスポートとクレジットカードと現金だけだ。5時40分、タクシーに乗ると一路、伊丹空港へと向かう。
 今回のツアーは成田が出発で、大阪からは取りあえず成田へ飛んでそこでもう一度JTBの窓口へ手続きに行くのだ。成田からは12時50分発の予定で、その2時間前が集合時間である。つまり10時50分。それまでに成田に着かなくてはいけないので、伊丹空港8時発の飛行機が指定であった。そしてその1時間半前が伊丹空港への集合時間となり6時30分となり、早朝の5時40分にタクシーを頼むことになったのである。
 タクシーに乗って「ニュースで成田空港の事、何かいってました?」と聞く。そう、前日、なんであんなに遅くなったかというと、準備が遅くなったのもあるが、首都圏での大雪のため、成田空港が午後6時30分より閉鎖され、再開のめどがたっていないというニュースをみてから続報がないか、待っていたからなのである。


 6時10分、伊丹空港に着く。3880円のタクシー代を払い、南ターミナルの正面から入る。正面に見えるボードに、乗る予定のNH76便成田行きの横に「欠航」の文字。あ〜あと思いながらも、今までの旅行と違い、ツアー旅行の気楽さである。後の事は自分で考えなくてもJTBがなんとかするはずである。

団体受付の1〜2番を探して受付のお姉さんに声をかける。「ドウントレッドのツアーの方ですね?」と言って、「早速ですが・・」「欠航ですね。」「はい、今、全日空と話をしていますので、もう少々、お待ちいただけますか?」との事。時計を見ると、15分。「じゃ、30分にまた来ます。」とういと、「お荷物は、私見てますから、ここに置いといてもらっていいですよ。」と言ってくれたのでスーツケースを残したまま、コーヒースタンドに行く。そう、朝食である。(^^)


 30分頃に再度カウンターに行くと、「7時45分発の羽田行きに振り替えました。羽田から成田まで電車で移動して貰えますか。」との事。ちなみにこの羽田行きもさっき見たときは満席だったので、一早くJTBが空席を押さえたのであろう。「羽田から成田までどれくらいかかりますか?」「1時間と少しかかると思います。」と答えてくれて、さっそくパスポートを見せて航空券とホテルのバウチャーを受け取り、搭乗口へと向かった。

 羽田への着陸前、機内アナウンスで成田までの電車の乗り継ぎ案内があった。モノレールで浜松町まで。その先はJR山手線で日暮里で乗り換えて成田、または東京駅で乗り換えて成田エクスプレス、もうひとつは京成急行の成田への特急があるとの事。
 9時、羽田空港へ着陸。荷物を受け取るまでの間、近くのインフォメーションに向かう。僕の前の人も成田までの道順を聞いており、一緒に後ろで聞いていた。結局、東京駅から成田エクスプレスに乗るのが時間的には一番早そうだという事だったが、荷物がすぐに出てくるとも限らず、乗り換えに遅れた場合、もっと遅くなる事も考えられるので、羽田空港の地下から直通で出ているという、9時55分発、京成急行の特急成田空港行きに乗ることにした。
 しかし、乗ってから思ったのだが、特急というのをどういう風に考えているんだろうという事。関西を走る私鉄で言えば、どう考えても準急以下である。一時的に6つくらい駅をとばしたところもあるが、各駅停車をする区間も多く、とばしても2つとかで、1時間44分の間に15以上は止まったのではなかろうか。続けて5分も走らない所がほとんどである。予定は12時50分発だ。1時間前としても11時50分。第2ターミナルのある駅への到着予定は11時39分だという。そこそこ走っていてその時間ならそんなにいらつきもしないのだが、特急とは名ばかりの停車の仕方を見ているととにかく、いらついた。電車の中なので遠慮していたのだが、11時30分に成田駅についた時、「3分間の停車です。」といったので我慢できずに日程表に載っている成田空港の連絡先に電話を入れた。飛行機の予定は12時50分で変わっていないと言う事だ。まだ電車の中にいて、今、成田駅にいる旨を伝える。今回のドウントレッドまでの移動の中で一番疲れたのは、この電車での1時間44分であった。ずっと座っていたにも関わらず、である。
 第2ターミナルビルにつくと、わき目もふらずに3階の出発ロビーへと上がり、受付カウンターへ向かう。スーツケースをX線の機械に通し、JTBと書かれた受付へ。受付のお姉さんが紙を持って向かい側のSASのカウンターに行こうとしていた所で、僕を見つけるなり、「山本さんですか?」「はい。」「お待ちしておりました。」とカウンターの中に戻った。手に持っていた紙には僕の名前が入っていた。出発時刻の1時間前を割ったためにスカンジナビア航空へいく所だったのだと思う。
 すぐに航空券を3枚持って、「搭乗手続きをしてきます。」と向かいのカウンターに小走りに行った。なんとか、間に合ったようである。
 雪の影響で、飛行機の乗務員の到着が遅れているとかで、13時15分から搭乗開始、13時30分発の予定になっているとのこと。しかし、時計はすでに12時をまわっている。出国手続きにも時間をとられる事を考えるとそんなには時間は無い。
 近くの銀行の三和銀行の窓口に行き、両替をと思うが、スウェーデンクローナーの表示が無い。少し横の東海銀行も見てみるが、無い。そこで東海銀行の窓口の人に「スウェーデンに行くんですけど」と聞くと、「うちでは扱っていません。一番橋の、東京三菱さんなら、扱っているかもしれません。」と教えてくれた。東京三菱銀行の表示を見つけてレートの一覧を見ると、ちゃんとスウェーデンの名前が載っていた。取りあえず2万円を両替する。1400クローナーとお釣りが帰ってくる。18914円だった。換算レートは1クローナーが13.51円だ。
 南口より出国すると一番南の端、64番ゲートへと向かう。日程表によると11時間の搭乗中、機内食は1度と書かれていたので、売店で昼食に掻き揚げうどんとおにぎり、機内でのおやつにぷりっつと剥き栗、そして水を買った。
 うどんを食べながら携帯電話でメールを打ち、搭乗前に電源を切る。13時15分、予定通り搭乗が始まった。窓際2列、真ん中3列で、小さめのジェット機だ。やがてゆっくりと機体が動きだし、滑走路へと向かった。前に2機が待機しており、順番に離陸、その後着陸を1機させてから13時50分、いよいよ離陸である。


 眼下に雪景色の首都圏を眺めながら離陸。いよいよファンタジーの国、北欧を目指しての長い旅が始まった。


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