ハナへ

 最初に書いた僕の行きたいところというのがガイドブックで見つけた「天国のハナ」である。600ものヘアピンカーブ、車一台分の幅しかない小さな橋、80kmの道のりに必要な時間が3時間半という、交通の便の悪さから未だに昔のハワイが残っているという田舎町。ハイウェイとは名ばかりの、舗装だけはしてある山道走り、苦労の末にたどり着く、天国と称される程の不思議な魅力を持つ町、ハナ。途中の悪路にはまさに絶景と呼ばれる風景が連なっている。ここだ!と思った。連れ合いに「ハナに行かないのならハワイに行かない。」とまで言ったのである。

 例によってハナへのドライブ情報をネットで集める。苦労してハナにたどり着いた話、結局、ハナにはたどり着けなかった話、ハナに行くのに必要な物は絶対にハナに行くのだという強い意志とスペアの運転手、等々、結構笑える話もあった。その中で、今回こちら、「ALOHA NOPU」のサイトの中にある「ハナへドライブ・・・ハナからドライブ」というページをコピーして持って行った。ハナでの食事事情、途中のトイレ事情等もあり、なかなか親切。

 行けば帰らなくてはならない。天国のハナで過ごした後はまた悪路を引き返してこなくてはならない。ハナに行かなければハレアカラ山のサンライズダウンヒルにも参加できるし、余裕が出る。ハナの往復は一日仕事だ。それでも僕はハナに行きたかった。ただのド田舎と称していた人もいたが、ハナへの思いは強くなるばかりであった。僕一人で行く事も考えたが、「せっかく一緒に行くのに・・」という連れ合いの言葉に、みんなに付き合って貰う事にしたが、同乗している人間が少しでも楽になるようにと、今回はこのミニバンを借りたのだ。

 目覚ましが鳴ったのかどうか、よくわからないが、6時30分を回ってから目が覚めた。この時点ですでに予定を30分以上もオーバーだ。あわただしく朝食をして身支度を調え、ようやく出発したのが7時40分頃。コピーしてきたページの中に、「ハナに行く車は途中のカフルイを8時半から10時の間に通過するのでそれ以前に通過しておく方がよい」との情報があったので、時計を見ながらカフルイを目指す。「30分もあったら通過できる」という連れ合いの言葉通り、8時過ぎにはカフルイを通過し、ハナハイウェイの入り口、パイアを目指す。後半の悪路を考え、道のいいところでなるべく時間を稼いでおきたかった。天気には恵まれず、雨が降り出してきた。なかなかさい先のいい(?)スタートである。

 いくつかのカーブを過ぎ、やがてスピード制限15マイルの標識が出てきたとたん、急な狭いカーブにつっこんだ。あまりにもいきなり、道が狭くカーブが急になる。ちょっとびっくりした。
 うっそうと茂る森の中、片道一車線、所々車線が無くなる所もあり、右側(右側通行なので)一杯一杯の状態で走る。

 「東マウイ一周ツアー」のバスが先頭を走る。道になれているから、
きっとかっとんで行くんだろうと思っていたのだが、思いの外、ゆっくり
と走っていた。しかし、この車の後ろを走るのは実に気楽であった。
 途中のケアナエ半島にあるトイレ。ここのトイレはきれいだ。尚、
景色はもっときれいなので是非、お立ち寄りを。ツアーバスも立ち
寄る定番の場所だ。ハナに向かって走っていく途中の、下りの
右カーブに分岐点がある。分岐点から2〜3分で海沿いの駐車場
に出る。
 ケアナ半島を出てハナを目指す。ハナハイウェイに戻って少し
走った所にケアナエ半島を見渡す事が出来る展望台がある。その
駐車場でココナツジュースを売っていたお兄さん。ひとつ5ドルは
高いかなと思ったが、話の種に買って飲んでみた。はっきり言い
ます。まずいです。冷やせばどうにかなるかなという味でした。
 果肉もかぶりつく事が出来るようになっていたのを分けてくれた
が、これも硬い。まあ、話の種ですね。
 (物はココナツの種ですが)
 海の景色だけではなく、途中、何カ所も滝等の見所があり、駐車場
が無い場所でも少しのスペースを見つけてこのように写真を撮ってい
る人達がたくさんいた。


 やがてハナエアポートへの標識が出てきてワイアナパナパ黒砂海岸への入り口を通りすぎ、左手にかの有名なハナホテルが見えてきた。そう、とうとうハナについたのだ。時間は11時。キヘイの南端にあるマウイ・バニヤンから3時間20分である。思ったより早かった。正直、えっ、悪路って、こんなもん?という感じだ。早めに昼食にしようと目をつけていたランチ・レストランに向かう。しかし、営業時間が11時半からとの事で、しばらくは周りの土産物屋を覗くことにした。

 土産物屋で見つけた置物。なんかおかしくないですか?これ以外
にも象のバージョンと猫のバージョンがありました。語呂が合わない
と思うんですが・・・。
 11時30分になりレストランへ入る。無口だが愛想は悪くないロコの
店員さんが注文を取ってくれる。ツアー客も続々と入店してきて席が
埋まっていく。しかし、騒々しい雰囲気は無く、素朴な感じで落ち着いて
食事が出来た。


 食事が済み、連れ合いが乗馬を提案する。連れ合いがハセガワジェネラルストアーで乗馬の申し込みが出来るところを聞いてきた。ハナホテルとの事で、連れ合いとお義父さんが先に歩いていき、僕は息子と車をハナホテルまで持って行くことになった。
 ホテルの駐車場に車を停め、ホテルの方へ行くと、玄関の前で連れ合いが従業員と話をしていた。従業員は乗馬の経験と人数を確認しているようだった。従業員は奥に電話をしにいって、しばらくすると、「Sory-」と言いながら帰ってきた。連れ合いの話では、最初、時間が過ぎているので馬はもう出てしまったとの話だったので外に出てきたら、後から追っかけてきて、先ほどの場面になったとの事。この従業員さん、何とかしようと努力をしてくれたようだ。まあ、せっかくホテルに来たので、ホテルの売店を覗いて帰ることにした。息子がトランプと連れ合いがサンバイザー等を買ってホテルを出た。
 駐車場の奥にはゆっくりと草をついばむ牛たちがたくさん放されている。連れ合いが思わず「のどかやな〜。」と言った程、ゆったりしている。

 まあ、ここにいても仕方がないので、この後、ハナ・ベイに行ったが、思ったほどきれいではなく(日本に比べればよっぽどきれいです。ただ、キヘイのベイはもっときれいです。)、泳ぐ気にはなれないので、僕がもうひとつ、行っておきたかった「ワイルアの滝」に向かうことにした。

 道はさらに細くなる。この先はここまで以上の覚悟が必要だ。
 これがワイルアの滝。ここは少し広くなった道ばたに車を停める。
 あまりスペースも無く、ゆっくり出来る感じではない。


 時計を見れば14時30分、帰りの事を考え、引き返す事にした。一路、キヘイ南端、マウイ・バニヤンへ。
 途中の景色、特に海岸線に出た時には絶景絶景また絶景である。車を停めてゆっくり見ようにも停める場所が無い。まあ、まったく無いわけでは無いが、好きな所というわけにはいかない。
 行きに寄らなかった展望台により、写真を撮る。車にも道にも慣れてきて、結構、スムーズに運転が出来る。元々、若い頃は山道をよく走っていたので、このハナハイウェイが特別悪路だとは感じなかった。結局、マウイ・バニヤンに到着したのは17時30分。ハナよりまだ15分程奥のワイルアの滝から、ハナハイウェイが始まるパイアの町からまだ40分ほどかかるキヘイの町まで、3時間で帰ってきた。

 ハナを一言で言うと、やっぱり田舎町である。のどかな雰囲気と静かな時間を実感するためには日帰りでは多分、無理である。今回、正直な所、思ったほどではなかったなというのが感想である。ハナを天国と感じるためにはある程度の滞在が必要ではなかろうか。しかし、圧倒的多数の観光客はきっと日帰りなのだ。日帰りの場合、どっちかというとハナというよりは道中の景観を楽しむのが正解であろう。ハナホテルに泊まってゆっくり過ごせばその良さも実感できるのかもしれないが、いかんせん、高い。あの値段を出すのであれば、他でも探せそうである。

 まあ、どちらにしろ、途中の景観が楽しめた事と、思ったほどの悪路ではなかった事などもあり、まあ、行っておいてよかったかなと思う。行かなければいつまでも憧れだけが残ってしまうから。まあ、時にはその方がいいこともありますが。

 夕食は近くの中華店に行ってすませると、今回は携帯を3つ、ホテルの備え付けのアラームと、万全の体制を整えた。何せ明日はもう一つのメインイベントの為、6時起きである。しかも、これは遅れるわけにはいかない。無事に起床できる事を祈りながら床に着いた。


 


追記

 ハワイから帰って、日常生活に戻り、しばらくしてフッと気づいた事。それは、何となく、「ハナに行きたいな〜。」という思いが浮かぶ事だ。ハナに行った時にはそれ程大した所だとは思わなかった。まあ、行っておいてよかった、くらいの話であった。何に惹かれるのか、それはよくわからない。何が有ったと聞かれても、田舎だったよとしかいいようがない。
 しかし、ハナへの思いは静かに僕の中にある。次にハワイにいったら、やっぱり、ハナに行こうと思ってしまう。不思議な魅力を持つハナ。今度行くときには頑張って、あのハナホテルに泊まりたいと思う。




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