リ ド

 5時半になり、連れ合いが和服に着替え始める。全身鏡が無いため、帯の後ろなどを手伝う。1時間くらいかかると思っていたが、連れ合いも慣れてきていて、30分くらいで着る事が出来た。あまり早く行っても、待ち時間が延びるだけなので、もう少し休憩してからと思ったが、連れ合いは和服を着てしまったので、寝ころぶ訳も行かず、少し早い目だが、フロントに降りる。
 タクシーを頼むと、5分程で来た。後席に乗り込むと、ドライバーに「リド」と告げる。「シャンゼリゼ」とドライバーが返してきて、連れ合いが「イエス」と答える。部屋で連れ合いが、「リドの住所とかは?」と聞いてきたときに、「パリのタクシードライバーでリドを知らない人はいない。」と断言したのだが、確認したわけではないが、自信はあった。それくらい、リドは有名だ。(多分・・・)
 旅行の下調べをしている時に、グーグルアースでホテルからリドまでのルート検索をしたのだが、出てきたルートは環状線を北回りでシャンゼリゼ通りまで、距離は17kmだった。もう一つは南側に降りてセーヌ川沿いに走るルート。しかし、この運転手はどちらのルートも取らず、間の道を曲がりくねりながら走った。走行距離は一番短いだろう。しかし、さすがに夕方である。結構渋滞している。やがて、綺麗なイルミネーションが見えてくる。シャンゼリゼ通りだ。右折してシャンゼリゼ通りを凱旋門に向かって走る。信号を3つ超えた所で、リドの前で停まった。31.6ユーロ。32ユーロあれば良かったのだが、コインが無かったので、紙幣で35ユーロ渡す。帰ってきたおつりの中から1ユーロコインをドライバーに渡し、車を降りる。






 リドの前で。実は、ここで沢山写真を撮ろうと思っていたのだが、2枚しかない。何故かというと・・・。





 もう一枚、シャンゼリゼ通りを背景に写真を撮っていると、見覚えのある顔が・・・。お互いに「えーっ!」であった。そう、同じツアーの人たちだ。Iさん、Aさん親子、おじいさんとお孫さん達だ。ベルサイユの後、皆さんでシャンゼリゼ通りを散策していたらしい。しかし、よくもまあ、このタイミングで会ったものだ。もう5分、どちらかにずれていれば、会わなかったのだから。連れ合いの着物姿に驚きながら、「もし、ナイトショーのツアーが成立していたら、ここだったの?」との問いに、「多分。」と答える。ナイトショーのツアーが中止になったので、自分でインターネットで予約した事などを話したりして、連れ合いと二人でリドの入り口へ。行列はまったくなく、僕たち2人だけだ。家で印刷してきたクーポンを見せ、中に入る。クロークでコートと連れ合いのショールを預けて、2ユーロを支払う。受付に行き、クーポンを渡すと、隣にいたボーイさんがにこやかに僕たちを案内してくれる。途中でこちらを振り向き、「ここに来るのは何度目ですか?」(だったと思うのだが)と聞かれた。即答出来ないでいると、「いい席に案内しますよ。」と、前回、ツアーで来た時の席を通り越して前の方の席に。舞台に非常に近い場所だった。


 2回目のリドは、前回に比べると随分、冷静でいる事が出来た。おかげで、色々気づく事があった。リドの体験記は、あちこちのサイトにあるが、そこに載っている情報の中で、間違っているものがあるので、ここに載せておく。

 1.カメラは持ち込み禁止ではない。
    前回、カメラは持ち込み禁止という事で、案内してきたドライバーにカメラを預けた。日本語でかかれているツアーの案内にも、カメラは持ち込み禁止とかかれているが、実際にはパシャパシャ撮っていた。「黙認している」と書いてあるがあったので、僕もこれは黙認だろうから、とあまり派手に撮らないで、どちらかというとコソコソ撮っていた。しかし、バンドの演奏が終わり、ショーが始まる前に、「写真は撮らないでください」というアナウンスが流れた。つまり、ここまでは写真を撮ってもOKなのだ。

 2.席は料理のみで決まる訳ではない。
    僕たちが座った席の周りは、食事を食べている間はずっと空いていた。食事が終わってから、ドリンクだけでショーを見に来る人たちが案内されてきた。つまり、シャンパンのみだと一番後ろの席だというのは、違うのだ。これは横から見ていての想像だが、一組、案内されてきて、ボーイが、「この席はどうですか」というように右手を広げた(聞き取れなかったので、本当にそういったかどうかは分からないが)。4人のうち、一番貫禄がありそうな男の人が、舞台とテーブル周りを見て、うなずくと、ボーイにチップを渡していた。つまり、席の善し悪しはチップ次第なのかも知れない。


 ボーイが来て、料理の確認を行う。シャンパンorワイン、サラダorスープ、魚or肉、チョコレートケーキorエクレア。ドリンクは赤ワインを頼み、後は全部楽しめるように二人で違うものにした。





 食事の間、バンドの演奏が。見ての通り、周りは空いている。ちなみに、ショーの舞台はもっと手前で、僕たちの席から舞台までの間に席は5つだ。この写真で左手側、僕たちの座っているテーブルのすぐ横が舞台の先端になる。






 前菜のサラダ。で、味はというと・・・・それは他のサイトにいろいろ書かれているが、まあ、その通りと言っておきます。(^^;




  途中、カメラマンが来て、写真を撮ってくれたのだが、それを綺麗な台紙に入れて売りに来た。二人で写っているのが1枚、それぞれ一人ずつ写っているものが2種類ずつ、合計5枚。結構、綺麗でリドのロゴが入っている。連れ合いはその中から3枚を選んだ。「36ユーロだって。」と言ったが、多分、もっと高いだろうなと思いながらカードを渡す。日本でも観光地で2L程度の写真を買うと2,000円とかするのだ。ここの写真はA4版だ。しかも、綺麗な台紙付き、ロゴ入り。ボーイが持ってきたカード用の端末に入力されていた金額は60ユーロ。1枚20ユーロだ。まあ、そんなもんだろうと思いながら、暗証番号を入力する。今回切ったカードの中では一番の高額であった。

 舞台がせり上がり、いよいよショーが始まる。前回とは構成も違い、初めに入ったパフォーマンスは、縄で駒を空中で回すものだ。なかなか見事なものであったが、最後に空中で大きな音をたてて破裂した。これにはびっくりした。連れ合いの方を見ると、連れ合いも随分びっくりしている様子だった。

 実は、この時、僕は気がついていなかったのだが、連れ合いは薬を飲んでいる所にワインを飲んだせいか、相当、具合が悪かったのだそうだ。殆ど、意識の無い所に突然大きな音がしたので、かなりびっくりしたらしい。僕は舞台の方に夢中になっていたので、連れ合いの変化に気がつかなかった。
 40分くらいして、連れ合いが、「ゴールドマンショーが終わったら帰ろう。」と言い出した。相当、つらいみたいだ。ゴールドマンショーは、リドのショーの中では僕の一番好きなショーなので、連れ合いもそれまでは我慢しようと思ってくれたようだ。無理をさせる事も出来ないので、そうしようという事になり、5分程すると、ゴールドマンショーが始まった。ゴールドマンショーが終わり、帰ろうかと連れ合いの方を見るが、連れ合いが反応しない。結局、そのまま舞台を見ていたが、1時間半ほどして、「帰ろうか?」と連れ合いに声をかける。「フィギアは見なくていいの?」「見たいと言えば見たいけど。」「終わりまで頑張るから、そのかわり、クロークには早く行って、先に帰られるようにして。」帰ろうと言った頃よりは少しましになってきているようだった。

 11時過ぎ、ショーが終わると、さっさと席を立ちクロークに向かう。すでにクロークの前には人だかりが出来ている。いつもならおとなしくどこかの列の後ろに並んで順番を待つのだが、今回は厚かましく、列と列の間に中途半端に立ち、前に進んだ列の所に割り込みながら前に行く。カウンターでみんなが番号札を差し出している中、小さな体で持っている番号札をアピールする。10人くらいが差し出している中、3番目くらいに荷物を持ってきてくれた。

 外に出る。「リドを出たすぐにタクシー乗り場があり・・」という旅行記があったのだが、目の前には無かった。連れ合いが道の反対側にタクシー乗り場を見つけ、信号を渡る。道の反対側だが、確かにリドの正面であった。待っているタクシーに乗り込み、ホテルで貰った住所がかかれた紙をドライバーに見せる。すぐにうなずいて走り出す。この運転手は、中を抜けていかずに、一旦、セーヌ川沿いに出て東に走り、環状線を北に上がった。空いていたので、20分かからずにホテルに着いた。21.4ユーロ。22ユーロを渡し、部屋に引き上げる。

 時間が遅いため、シャワーはやっぱり、明日の朝という事にして、取りあえず着物もスーツもハンガーに引っかけ、ベッドへと潜り込んだ。


リドについての感想・・・旦那さんが、是非もう一度見たいと訪れたリド!私もそれなりに期待をしてドレスアップもして望んだわけですが、少し思っていたのとは違うところもあり、書いてみようと思います。とは言え、体調がかなり悪くて普段の感覚とは違っていたかも知れないと言うこともあるので、公正な意見にはならないかも知れません。
体調が悪かったという根拠の一つに味覚が変だったということがありました。どうも、お料理がしょっぱいのです。スープが辛い、お魚も辛い・・旦那さんに同じものを食べて貰うと辛くないと言われて、びっくりしました。風邪で胃の調子が悪いのは自覚していましたが、異常に食べ物が辛いと感じたのは初めてでした。これは、もしかしたら、飲んだことのない市販薬のせいかもしれません。よく効く薬で、飲めば確実に楽になって動き回ることが出来ました。でも、かなり胃を荒らすようでした。

 大人のナイトショーということで、トップレスの女性達が踊って、それを旦那さんは自分の体を見せびらかす文化、そして、それを美しいと思ったと書いていたと思うのですが、私にはどうもそれは受け入れられませんでした。私には、踊り子さん達の体がどうも美しく見えないのです。体に対する美の基準が違うのかも知れませんし、体を見せると言うことに対する感覚がそもそも違うのかも知れません。日本の、襟足や着物の袖や裾からのぞく素肌こそが美しいという感覚、現代的な健康美の感覚とは全く違う、性を露骨に強調するコスチュームや踊りは私は好きではありませんでした。気分が悪くなりました。
それに、踊りも上手いとは思いませんでした。かなり上手下手の差もあり、群舞としての総合美も感じませんでした。

 それに比べて、ゴールドマンショーをはじめそれぞれのパフォーマンスは技術的にも演出も見応えがありさすがと思いましたが、日本のテレビで私たちは世界的なレベルのショーをすでに数々見ており、それを細切れに構成してあるだけでは、感動するというレベルには至りませんでした。

 また、席の構成、サービス自体も期待した程ではなかった様に思います。リドは、もっともっと向上していく意識を持った方がよいのではないでしょうか。

 今回の私の感想は非常に辛口であることは意識しています。しかし、どうしても、感覚が古くさく甘いのではないかというのが正直なところです。連れて行ってくれた旦那さんにはとても申し訳ないのですが・・ごめんなさい。

 しかし、外国で着物を着るという新しい経験が出来て、とても嬉しく思いました。このようなショーを見に行くということがなかったら、日本から和服を持って行くこともなかったと思うので、旦那さんに感謝です。願わくば、またこのような機会があれば、体調万全で望みたいものです。また、よろしくお願いします。




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